中高生に送りたい数学の本まとめ

 最近は春休みなので、本棚の本を一挙に整理していたのですが、どうも本棚を見ていると「ああ、この本、中高生のときに読みたかったなぁ…」という数学の本が意外と多かったのでまとめて見ました。(読んでいた本もありますが)

 と言うかこれは常々思っていることなんですが、数学は教育課程から専門書への導入が比較的少ない気がします(ただし大学を除く)。すくなくとも中高六年間における、数学の教育カリキュラムはかなり良い出来で、紀元前から19世紀あたりまでの数学数千年の歴史がわずか六年でマスターできる優れものです。が、いかんせんそれだけでは味気ないというかなんというか。まぁ、歴史小説を読んだり旧跡を歩いて歴史知識を深めるかんじで、数学も教科書や参考書出ない本を読む事も、肥やしになってくれるようなそうでないような。
 そもそも高校の数学教科書って、カリキュラムはよくできていても教科書自体の記述はスカスカでとても独習に耐えたもんではない気がする。

 簡単に言うと、中高生も教育指導要領外の数学にもっと萌えようってことで。うん。難易度目安は数学がそこそこ好きな中高生なら読みこなせることです。

数学ガール (数学ガールシリーズ 1)

数学ガール (数学ガールシリーズ 1)

 このブログでも何度となく紹介してきた(というか、麻婆茄子食べたいにゃとか書いてただけだがw)、数学ガールシリーズである。ストーリーの中に平易な文体で数学が埋め込まれている本書は、ついついサラサラと鉛筆を動かしたくなる絶妙な難易度の話題設定が素晴らしい。いや、こればっかりは見てもらわないと分からないのだが…。
 問題はストーリーの方で、甘酸っぱい青春ドラマをニヤニヤしながら読み進められる人にとっては良書と思われるが、受け付けない人には辛いだろう。と、言うことで一度書店で立ち読みしてみることをオススメ。もしくは著者のウェブサイトにも少しテキストが出ているので、試し読みは可能。是非是非。以下、続刊とウェブサイト。
数学ガール/フェルマーの最終定理 (数学ガールシリーズ 2)
数学ガール/ゲーデルの不完全性定理 (数学ガールシリーズ 3)
Web版「数学ガール」

プログラマの数学

プログラマの数学

 上の数学ガールシリーズと同じ作者による、数学の本。プログラマのための、と銘打ってはあるが、内容は一般的な数学の話がほとんど。強いて言えば停止性問題なんかはプログラマ寄りなのかなー。まぁ、でも全然プログラミングわからなくてもいいと思うレベル。一応ジャンル的には離散数学と論理がメインになるのだが、数学パズル的にチャレンジ出来る。

高校数学+α:基礎と論理の物語

高校数学+α:基礎と論理の物語

 この本は数学参考書のコーナーにひょっとしたら置いてあるかも。ネットでも本文が公開されていて読むことが出来る。大学数学への架け橋と書いてあるのだが、その中身は高校で習うまでの数学を再定義していく事にあると思う。負数同士の掛け算がなぜ正になるのか、と言う点など、おもしろい記述が色々。
 それ以外にも高校までの数学の内容が一まとめになっているので、かなり濃い。読むところも多いので、暇つぶしに読んでいくのにちょうどいい。下記ウェブサイト。
http://www.h6.dion.ne.jp/~hsbook_a/

プログラミングのための線形代数

プログラミングのための線形代数

 線形代数(の初歩)は、なんとなく本の当たり外れが少ない気がする。その意味はどの入門書読んでも大体取り扱っている範囲が同じ。で、この本を選んだのは単純にこの本で私が勉強したから。実際にある行列を用いて図形を変形させた場合等がプログラムを用いて確認できるのは良いと思う。

マンガでわかる統計学

マンガでわかる統計学

 統計学って、高校数学でCだか何だかをとって、しかもそこを担当教員が選ばないと、学ばない単元だったと記憶している。なのでやったことが無い人も居るかもしれないのだが、まぁこの本は一瞬で読める。入門書のお試し版と言ったところだ。
 今はコンピュータのおかげでサクサク統計処理が行えるようになったおかげで、実際に大規模なデータで遊べるのが楽しい。まぁ、統計学とどう付き合うかはおいておいて、ちょっと統計をかじると世論調査の見方なんかが変わって面白いよ、ということ。よって中高生におすすめ。

新装版 オイラーの贈物ー人類の至宝e^iπ=−1を学ぶ

新装版 オイラーの贈物ー人類の至宝e^iπ=−1を学ぶ

 この本は熱い。そして厚い。そもそも独習書と銘打ってあるだけあって、最終目標であるオイラーの公式の理解と導出に必要な数学的知識をこの本の中にすべて詰め込んである。と、いうわけで高校生はこの本読もう。オイラーの公式はガチで使える。ソコソコに抑えることが出来れば、DQ6で言うムドー戦(二回目)をクリアしたのと同じぐらいのブレイクスルーが得られること必定である。

フーリエの冒険

フーリエの冒険

 フーリエ変換という処理について扱ったもの。フーリエ変換自体は高校数学の範囲をオーバーしていて、その成果は画像や音声処理など、幅広い。実際問題、数学を入門しようとなると、ほとんどの場合簡単な代数を扱うことになる(と、ラング教授が書いていた)のだが、こういうちょっと実際に使っているところが想像できる内容も、入れておきたいところ。なににって、高校のカリキュラムに。
 この本の問題点を一つあげると、語り口調が人によっては大変ウザく感じられるかもしれないことであるw

これなら分かる応用数学教室―最小二乗法からウェーブレットまで

これなら分かる応用数学教室―最小二乗法からウェーブレットまで

 この本で扱う内容は基本的に高校数学の範囲外。だからちょっと難しい気もするのだが、ところがどっこいこの本はそれを感じさせないぐらい平易な筆致で諸々を説明してくれている。上述のフーリエ変換も扱っている。なので、この本を読んでふむふむと思った人は別に上の本は読まなくて良いと思う。

やさしいグラフ論

やさしいグラフ論

 グラフ論の本。グラフ論も最近は応用範囲がやたら広くて楽しい。ここから発展して行ったネットワーク理論とかもここ10年ぐらいホット。
 ただ、もちろん高校数学迄ではやらない。なぜ位相幾何学を全くやらないのかは不思議だが、やらないものは仕方ない。逆に言うと、ちょこっと入門書読むだけでも新鮮で楽しいのだ。例えば『ある図形が一筆書きが出来るかどうかを判定する』なんてのは頭の体操にぴったり。


 ここから先のレベルについては、まぁ多分適当に自分で本を探していける気がするので、この辺で止めておきます。あくまで「専門書の書架に目を通したことのない中高生の自習ガイド」なので。

 ただ、何にせよ独習の基本はフィーリングの合う教科書。ここに書いた本はもちろん私オススメの本ではあるのですが、本屋で一読してから、できれば図書館とかで学びたいジャンルの本をがっつり斜めよみしまくってから、良さげな本を数冊買うなり借りるなりした方が、学習効果は高いです。
 なぜか書評部分は常体で、それ以外が敬体というキメラ体になってしまった…。

 後一応逃げの口上を書いておくと、私は趣味で数学の本を読んでるだけで、数学を特にキチンと習ったこともない人間です。って訳なので、そんな人間でも分かる書籍リストなので良しとするか、そんな人間の言うことなど信用ならんと悪しとするかは、読者の皆さんにお任せです。
 ただ、上にも書きましたが、出来ればその判断は書店で行って欲しいところですね。